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糖尿病を改善する食事療法|7つのルールと今日から使えるレシピ集

25/06/26 23:35

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糖尿病の診断を受けたとき、多くの人が最初に悩むのが「何を食べればいいのか」「食事だけで改善できるのか」という疑問ではないでしょうか。

血糖値のコントロールに大きく影響するのが日々の食事。とはいえ、無理な食事制限や特別な食品ばかりでは、続けるのも一苦労です。

本記事では、糖尿病の改善に効果的とされる食事療法について、7つの基本ルールとともに、実践しやすい食事例やレシピを紹介します。薬に頼りすぎず、自分の力で体を整えていくヒントとして、ぜひご活用ください。

 

糖尿病における食事療法とは?

糖尿病の食事療法とは、血糖値を正常範囲に近づけるために、毎日の食事内容や摂取量をコントロールする治療法のことです。具体的には、摂取カロリーの調整、栄養バランスの改善、食事のタイミングや回数の最適化などが含まれます。

この療法は、薬物治療や運動療法と並ぶ「糖尿病の三大治療」のひとつであり、特に2型糖尿病の初期段階では、食事療法のみで血糖値が改善するケースも少なくありません。

また、食事療法はただ「制限」するのではなく、「どう食べるか」「何を選ぶか」に焦点を当てた前向きな取り組みでもあります。糖尿病とうまく付き合う第一歩として、まずは正しい食事の知識を身につけることが大切です。

 

糖尿病における食事療法の効果やメリット

糖尿病の食事療法には、血糖値の安定化、薬の使用量の削減、生活習慣病全体の改善といった効果があります。簡単に見ていきましょう。

 

血糖値の安定化と合併症の予防

食事療法における最大の目標は、血糖値を一定の範囲に保つことです。血糖値が乱高下すると、血管にダメージを与え、網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こす原因になります。

たとえば、精製された炭水化物(白米・白パン・砂糖など)を多く摂ると、食後の血糖値が急上昇しやすくなります。これを繰り返すと、体はインスリンの働きに鈍感になり、さらに血糖値がコントロールできなくなる悪循環に陥ります。

しかし、低GI食品(血糖値の上がりにくい食品)を中心に献立を組み立てたり、食物繊維の多い野菜を先に食べる「ベジファースト」を実践したりするだけでも、血糖値の上昇を穏やかにできます。そうした積み重ねが、合併症の予防につながるのです。

 

薬物療法やインスリン治療の負担軽減

糖尿病の治療では、薬やインスリンを使う場合もありますが、理想はそれらに頼りすぎないことです。薬は確かに効果的ですが、長期的には副作用や費用の負担、毎日の服用・注射のストレスも無視できません。

食事療法をしっかり行うことで、薬の服用量を減らせるケースもあります。たとえば、食後高血糖を防げれば、食事前のインスリン注射を省略できることもあります。また、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の値が改善すれば、医師の判断で薬の減量が可能になります。

もちろん、すべての患者が食事だけで改善できるわけではありません。しかし、「できる限り薬に頼らない体をつくる」という視点で考えれば、日々の食事内容が持つ力はとても大きいといえるでしょう。

 

体重管理による生活習慣病全体の改善

糖尿病の発症と深く関係しているのが「肥満」です。特に内臓脂肪型肥満(お腹まわりに脂肪が多いタイプ)は、インスリンの効きが悪くなる=インスリン抵抗性を引き起こすため、血糖値が高止まりしやすくなります。

ここで効果を発揮するのが、適切な食事療法による体重管理です。消費カロリーよりも摂取カロリーを抑えつつ、必要な栄養素をしっかり確保する食生活を続ければ、自然と体重が落ち、血糖値の改善にもつながります。

さらに、肥満が改善されることで、高血圧・脂質異常症・動脈硬化といった他の生活習慣病のリスクも下がります。糖尿病だけでなく、健康全体に良い循環を生み出せるのが、食事療法の大きな魅力なのです。

 

糖尿病における食事療法~7つのルール~

糖尿病の食事療法を成功させるには、ただ単に糖質を制限するのではなく、食べ方や内容、食事の組み立て方にルールを設けて実践することが重要です。ここでは、実践しやすい7つのルールを紹介します。

 

①適正なカロリー量を守る

糖尿病の管理で最初に考えるべきは、自分に合った摂取カロリーを知ることです。必要以上にカロリーを摂ると体脂肪が増え、インスリンの効きが悪くなり、血糖値の上昇を招いてしまいます。

一般的に、1日の適正カロリーは「標準体重 × 活動量係数(25~35)」で算出されます。たとえば、身長160cmの人の標準体重(身長m×身長m×22)は約56kgなので、軽作業中心なら56×30=1,680kcal程度が目安になります。

体重を無理に落とす必要はありませんが、まずは現状維持、もしくはゆるやかな減量を目指すのが現実的です。

<ポイント>
・食品表示を確認し、1食のカロリーを把握する
・高カロリーな揚げ物や脂身を避ける
・野菜やきのこ類で「かさ増し」して満腹感を得る

 

②栄養バランスのとれた食事を心がける

糖尿病だからといって糖質をゼロにしたり、特定の食品だけを食べ続けたりするのはNGです。重要なのは、「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」「ビタミン・ミネラル・食物繊維」といった栄養素をバランスよく摂ることです。

たとえば、白ごはんとおかずだけでは炭水化物と脂質に偏りがちですが、ここにサラダや味噌汁を加えると、ビタミンや食物繊維も摂取できます。主食・主菜・副菜をそろえた「一汁三菜」の形を意識することで、栄養バランスは自然と整いやすくなります。

特に大切なのが、たんぱく質(肉・魚・大豆製品など)をしっかりとること。筋肉を維持し、代謝を保つためにも、偏りのない食事が基本です。

 

③規則正しく1日3食をとる

血糖値を安定させるには、食事の回数と時間も重要です。朝食を抜いたり、夕食にまとめて大量に食べたりすると、血糖値の変動が大きくなり、体への負担が増してしまいます。

理想は、毎日ほぼ同じ時間に「朝・昼・夕」の3食をしっかり食べることです。間隔が空きすぎると空腹時血糖が高まり、次の食事で一気に上がる「血糖スパイク」のリスクも高まります。

「時間がないから朝はコーヒーだけ」「昼はおにぎり1個で済ませる」といった食生活は、糖尿病にとって大敵です。たとえ簡単でも、バナナとヨーグルト、納豆ご飯など栄養のある朝食をとるよう心がけましょう。

 

④食物繊維をしっかり摂る

糖尿病の血糖コントロールにおいて、食物繊維は非常に頼もしい味方です。特に「水溶性食物繊維」は、糖の吸収をゆるやかにし、食後の血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。

たとえば、白米だけの食事に野菜や海藻を加えるだけで、血糖の上がり方は大きく変わってきます。サラダだけでなく、ひじき煮、納豆、オクラなどもおすすめです。

1日に必要な食物繊維は成人で20g以上ですが、実際の平均摂取量はそれを大きく下回っています。意識して摂るには以下のような工夫が効果的です。

<食物繊維を増やす工夫>
・主食を白米→玄米や雑穀米に置き換える
・1日1回は野菜スープや具だくさん味噌汁を取り入れる
・間食にナッツ類や寒天ゼリーを選ぶ

 

⑤ゆっくりよく噛んで食べる

食べるスピードは血糖値にも影響します。早食いをすると、満腹感を得る前に過食になりやすく、結果的に摂取カロリーが増えてしまいます。また、消化吸収も早まるため、血糖値が急上昇しやすくなります。

一方で、ゆっくりよく噛んで食べることで、脳に満腹信号が届きやすくなり、自然と食べ過ぎを防げます。さらに、噛むことで消化を助ける酵素も分泌され、胃腸への負担も軽減されます。

<実践のポイント>
・ひと口で30回を目安に噛む
・一品ずつ味わって食べる
・箸を置いて口の中を空にしてから次の一口を運ぶ

 

⑥食品交換表を活用する

糖尿病食の基本教材として、日本糖尿病学会が作成している「食品交換表」は非常に有用です。これは、食品をエネルギー量(1単位=80kcal)で分類し、食品を交換しながら栄養バランスを整える方法を示しています。

たとえば、ごはん1杯(150g)=2.5単位と換算されており、これを1単位のパンや1.5単位のいも類に置き換えることで、全体のカロリーや栄養素のバランスを調整できます。

食品交換表を使うことで、「これは食べていい?ダメ?」といった迷いを減らし、自己判断による過剰摂取や偏食を防ぐことができます。

最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、慣れてくると献立づくりが格段に楽になります。管理栄養士の指導とあわせて使うと、より効果的です。

 

⑦外食や間食の工夫をする

糖尿病だからといって、外食やおやつを完全に我慢する必要はありません。大切なのは、「選び方」や「食べ方」を工夫することです。

たとえば外食では、定食を選んで「ごはん少なめ・野菜多め」にするだけでも、血糖値の上昇を抑えられます。ラーメンや丼物のような「単品炭水化物」は避け、汁物は残す、揚げ物を控えるなどの工夫も有効です。

間食についても、甘いお菓子を控える代わりに、低糖質のおやつや果物、ヨーグルトなどに置き換えることで満足感を保ちつつ、血糖値の安定が期待できます。

<外食・間食の工夫>
・定食を注文し、ごはんは半分にする
・うどんより蕎麦、ラーメンより冷やし中華を選ぶ
・甘いお菓子ではなく、ナッツやチーズを選ぶ

 

糖尿病改善に効果的な食事メニューの作り方

糖尿病をコントロールするためには、1食ごとの「内容」や「組み合わせ方」も非常に重要です。ここでは、献立作りのポイントを紹介します。

 

主食・主菜・副菜の組み合わせを意識する

バランスの取れた食事とは、「主食(ごはん・パン・麺など)」「主菜(肉・魚・卵・大豆などのたんぱく源)」「副菜(野菜・海藻・きのこなど)」が揃った食事のことです。これを意識するだけで、自然と栄養バランスが整いやすくなるでしょう。

このような「一汁三菜」スタイルは、見た目にも彩りがよく食欲をそそるうえ、血糖値の急上昇を防ぎやすくなります。

<献立の例>
・主食:雑穀ごはん(糖質量を控えつつ食物繊維をプラス)
・主菜:焼き鮭(良質なたんぱく質と脂質)
・副菜:ひじき煮+ブロッコリーの和え物(ビタミン・ミネラル・食物繊維)

 

調理法でカロリーや塩分をコントロールする

同じ食材を使っていても、「どう調理するか」でカロリーや塩分量は大きく変わります。糖尿病の食事療法では、油や調味料を使いすぎない調理法を選ぶことが大切です。

たとえば、鶏もも肉を唐揚げにすると一気に高カロリーになりますが、蒸し鶏やグリルにすれば、カロリーを抑えつつ素材の旨みも活かせます。

また、塩分が多い味噌汁や漬物を控えるかわりに、出汁や香味野菜(しょうが・ねぎ・しそなど)を使えば、満足感を損なわずに減塩ができるでしょう。

<おすすめの調理法>
・蒸す・茹でる・焼くなどの「ノンフライ調理」
・味付けは「だし・酢・香辛料・柑橘類」を活用
・野菜は水にさらさず、ビタミンを逃さず調理

 

食材選びに低GI食品や旬の野菜を取り入れる

食材選びも、血糖コントロールに大きく関わります。特に重要なのが「GI値(グリセミック・インデックス)」です。GI値とは、食後の血糖値の上がりやすさを示す指標で、値が低いほど血糖値の上昇がゆるやかになります。

白米や白パンなどは高GI食品ですが、玄米・全粒パン・そばなどは低GI食品です。これらを積極的に取り入れることで、血糖値の乱高下を防げます。

また、旬の野菜は栄養価が高く、価格も手頃で、何よりおいしく食べられるというメリットがあります。たとえば、春なら菜の花やアスパラガス、夏はトマトやピーマン、秋にはれんこんやきのこ類がおすすめです。

血糖値を抑える食材を上手に選び、楽しみながら糖尿病改善を目指していきましょう。

<低GI食品の一例>
・主食:玄米、全粒粉パン、押し麦、蕎麦
・野菜:ごぼう、ブロッコリー、なす、もやし
・その他:大豆製品、乳製品、ナッツ類

 

糖尿病改善が期待できる食事レシピ

糖尿病の食事療法を続けるうえで、「具体的に何を食べたらいいの?」という疑問はつきものです。ここでは、糖尿病の方でも安心して食べられる、栄養バランスの良いレシピを4つご紹介します。

 

【食物繊維たっぷり】大豆とごぼうの炒め煮

ごぼうや大豆は、便秘解消に役立つ不溶性食物繊維と、血糖値を正常に保ちコレステロールの吸収を抑制する水溶性食物繊維の両方を豊富に含む食品です。便秘で悩まれている方や脂質異常症の方は積極的に摂りたいですね。

▼詳しい作り方はこちら
食物繊維たっぷり! 大豆とごぼうの炒め煮

 

【血栓予防に】キャベツとしらすのおひたし

しらすとわかめを使用した、あっさりとしたおひたしです。しらすには、血栓を予防する働きのあるEPAが含まれており、心筋梗塞や虚血性心疾患など、生活習慣病予防に効果があると言われています。

▼詳しい作り方はこちら
しらすで血栓予防 キャベツとしらすのおひたし

 

【低カロリー高たんぱく】鶏肉のすき焼き煮

野菜がたっぷり入った、食物繊維が摂れるすき焼きです。鶏ももは皮なしを選んだり、皮を取ってから調理したりすることで、エネルギーは40%、脂質は70%カットすることができます。

▼詳しい作り方はこちら
低カロリー高たんぱく鶏肉のすき焼き煮

 

【減塩】海老と玉子の塩あんかけ

食欲がなくてもあっさり食べられる卵炒めです。調味料はあんかけにすることで、食材にあんがよく絡み、塩分控えめでもしっかり味が感じられます。

▼詳しい作り方はこちら
あんで減塩 海老と玉子の塩あんかけ

 

よくある質問【糖尿病 食事療法編】

ここでは、実際によく寄せられる3つの質問を取り上げ、専門的な観点と実生活での工夫を交えてお答えします。

 

Q.糖尿病でも好きなものを食べられますか?

完全に食べてはいけないというわけではありません。重要なのは、「量」と「頻度」をコントロールすることです。

たとえば、甘いお菓子や揚げ物を「絶対禁止」にすると、かえってストレスになり、暴飲暴食の引き金になる可能性があります。むしろ、少量を特別な日のご褒美として取り入れるほうが、長く食事療法を続けやすくなります。

具体的には、以下のような工夫で「好きなもの」を無理なく楽しむとよいでしょう。

<ポイント>
・シュークリームなら小さめサイズを1個、間食として単独で食べる
・ケーキを食べる日は夕食のごはんを少なめにする
・揚げ物を食べる日は、野菜中心の副菜で脂質を抑える

 

Q.家族と同じ食事をしても大丈夫?

基本的には「工夫次第で可能」です。糖尿病の食事は特別な献立ではなく、「誰にとっても健康的な食事」だからです。

ポイントは、調味料や量の調整を行ったうえで、見た目や味の満足感を損なわないようにすることです。たとえば、炒め物を作る際に調味料の量を半分にし、最後に取り分けたあと家族分にだけ追加で味を足す方法があります。

また、味の濃さは「だし」「香味野菜」「スパイス」で補うことで、薄味でもおいしく仕上げることができます。家族全員が同じ料理を楽しめるようなレシピを選べば、調理の手間も減り、食事療法がより継続しやすくなりますよ。

 

Q.食事療法を続けるコツが知りたい

継続のカギは、「無理せず、できることから始める」ことです。完璧を目指すよりも、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

たとえば、いきなり1日3食をすべて改善しようとするのではなく、「朝食だけは野菜を加える」「夜はごはんを半分にする」といった1つの習慣を意識するだけでもOKです。

何よりも、「自分はよくやっている」と前向きに評価することが、習慣化の原動力になるでしょう。

<続けるための工夫>
・週末に作り置きしておく(副菜3種でOK)
・レシピ本やYouTubeで「糖尿病向けレシピ」を定期的にチェックする
・血糖値の記録や体重変化をグラフで見える化してモチベーション維持

 

まとめ

糖尿病の改善には、薬だけでなく、毎日の食事を見直すことが何より重要です。本記事では、糖尿病における食事療法の基本から、7つの実践ルール、具体的なメニュー例やレシピ、よくある疑問までを網羅的にご紹介しました。

糖尿病だからといって、すべてを我慢する必要はありません。大切なのは、正しい知識と前向きな姿勢で、できることから始めることです。無理のない範囲で、一歩ずつ生活習慣を整えていけば、確実に体は応えてくれます。

今日の食事から、少しだけ意識を変えてみませんか? あなたの一歩が、未来の健康をつくる第一歩です。

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