糖尿病を治す食事とは?寛解を目指す食事の基本と継続のコツ
26/06/17 01:28
「糖尿病を食事で治したい」——そう思ってこの記事にたどり着いた方は、きっと真剣に自分の体と向き合っている方だと思います。
薬を飲み続けることへの不安、毎日の食事をどう変えればいいのかわからない不安、そして「本当に良くなれるのだろうか」という漠然とした不安。そんな気持ちを抱えながら、今日も食事と向き合っているのではないでしょうか。
この記事では、糖尿病と食事の関係を基礎からわかりやすく解説し、毎日の食事に取り入れられる具体的な方法をお伝えします。一緒に、現実的で続けられる食事改善の方法を考えていきましょう。
そもそも糖尿病は食事で「治る」のか?
「食事を変えれば糖尿病は治るのか」——この問いに、まずは正直に向き合うことが大切です。ここでは、糖尿病と治療の現実についてお伝えします。

糖尿病に「完治」はあるのか
結論から言えば、2型糖尿病において「完治」という概念は、現在の医学では一般的に認められていません。
糖尿病は、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌量が減ったり、働きが弱まったりすることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。この体の仕組み自体が元通りになることは、残念ながらほとんどのケースでは期待できません。
「糖尿病は一生付き合っていく病気」と言われるのは、こうした背景があるからです。
ただし、誤解してほしくないのは「治らないから何もしても無駄」ではない、ということです。食事を変えることで、血糖値を正常に近い状態に保ち続けられる可能性は十分にあります。
「寛解(かんかい)」という考え方
糖尿病において現実的な目標となるのが「寛解(かんかい)」です。
寛解とは、病気が「完治」したわけではないけれど、症状が落ち着いて薬なしでも血糖値が正常範囲に保たれている状態のことを指します。がんの治療でも使われる言葉で、「治った」ではなく「病気が活動していない状態」というイメージです。
2型糖尿病における寛解の目安として、国際的には「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%未満の状態が、薬なしで3か月以上続いていること」が定義のひとつとして提唱されています(※Lean et al., The Lancet, 2018)。
HbA1cとは、過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する検査値のことです。この値が下がることは、それだけ血糖コントロールが改善されているサインと言えます。
寛解は誰でも必ず達成できるものではありませんが、食事・運動・体重管理を積み重ねることで、可能性を高めることができるでしょう。
糖尿病の治療で目指したい現実的なゴール
「完治」を目指すのではなく、「寛解」または「良好な血糖コントロールの継続」を目指す——これが、糖尿病治療の現実的なゴールです。具体的には、次のような状態を目指していきます。
<糖尿病の食事療法で目指したいこと>
・HbA1cを目標値(多くの場合7.0%未満)以内に保つ
・食後の血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)を防ぐ
・適正体重を維持し、インスリンの効きをよくする
・合併症(目・腎臓・神経へのダメージ)のリスクを下げる
糖尿病を治す(寛解を目指す)食事の基礎知識
食事を変えるにあたって、まず「なぜその食事が糖尿病に影響するのか」を理解しておくことはとても大切です。ここからは、血糖値と食事の関係、そして体重管理の基本を簡単にご紹介します。

糖尿病と血糖値の関係
私たちが食事をすると、食べたものが消化されてブドウ糖になり、血液中に入ります。この血液中のブドウ糖の濃度が「血糖値」です。
健康な人の場合、血糖値が上がるとすい臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖を細胞に取り込んで血糖値を正常範囲に戻します。
ところが糖尿病になると、このインスリンの分泌量が不足したり、インスリンが出ていてもうまく働かない(インスリン抵抗性)状態になったりします。その結果、血糖値が高いまま下がりにくくなってしまうのです。
血糖値が高い状態が続くと、血管が少しずつダメージを受けます。これが長年積み重なると、糖尿病の三大合併症と呼ばれる「網膜症(目)」「腎症(腎臓)」「神経障害(手足のしびれなど)」につながっていきます。
だからこそ、食事で血糖値の上昇を穏やかにすることが、合併症予防と寛解への第一歩になるのです。
食事療法で大切なのは血糖値を安定させること
糖尿病の食事療法でもっとも大切なのは、「血糖値を急激に上げない食事をする」ことです。
よく、「甘いものさえ避ければいい」と誤解されることが多いのですが、実際には甘いものだけでなく、白いご飯・食パン・うどんといった精製された炭水化物も、血糖値を急激に上げる原因となります。
血糖値の上がりやすさを示す指標として分かりやすいのが、「GI値(グリセミック・インデックス)」です。GI値が高い食品ほど、食後の血糖値を上げやすいということ。覚えておくとよいでしょう。
<GI値の目安(参考)>
・高GI(70以上):白米、食パン、うどん、じゃがいも
・中GI(56〜69):玄米、パスタ、さつまいも
・低GI(55以下):大麦、そば、豆類、野菜全般
ただし、GI値だけを気にすればいいわけでもありません。食べる量・食べる順番・食べる速さなども、血糖値の上がり方に影響します。これらを組み合わせて考えることが、食事療法の本質です。
体重管理(適正エネルギー量)の基本
特に2型糖尿病では、体重管理が非常に重要です。体重が増えるとインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなってしまうからです。そのため、まずは下記に示す「1日の適正エネルギー量」をもとに計算をし、1日の適切な食事量(エネルギー量)を知ることから始めてみましょう。

1日の適正エネルギー量(kcal) = 目標体重(kg) × エネルギー係数
<①目標体重の算出>
目標体重は、年齢によって用いる係数が異なります。特に高齢者ではフレイル予防の観点から、少し高めのBMIを目標とします。
・65歳未満:身長(m) × 身長(m) × 22
・65歳〜74歳:身長(m) × 身長(m) × 22〜25
・75歳以上:身長(m) × 身長(m) × 22〜25
※75歳以上の後期高齢者では、現体重に基づき、フレイルや身体機能の評価を踏まえて適宜判断します。
<②エネルギー係数(身体活動レベル)の目安>
日々の活動量に合わせて係数を選択します。
・軽い労作(デスクワーク・主婦など):25〜30 kcal/kg
・普通の労作(立ち仕事・家事+軽い運動など):30〜35 kcal/kg
・重い労作(力仕事・活発な運動習慣など):35〜 kcal/kg
例えば、身長170cmでデスクワークの方なら、目標体重は1.7×1.7×22=約63.6kg。適正エネルギーは63.6×27=約1,700kcalが目安になります。
この計算はあくまでも目安です。年齢・性別・病状によって異なるため、実際には主治医や管理栄養士に相談しながら自分に合った量を見極めていくとよいでしょう。
糖尿病を治す(寛解を目指す)食事の7つのルール
食事療法の基本を理解したところで、実際に毎日の食事に取り入れたい具体的なルールを7つにまとめました。すべてを一度に実践しようとせず、まず取り組みやすいものから始めてみましょう。
<糖尿病食の7つの基本ルール>
①適正なカロリー量を守る
②栄養バランスのとれた食事を心がける
③規則正しく1日3食を摂る
④食物繊維をしっかり摂る(野菜・海藻・きのこ類)
⑤ゆっくりよく噛んで食べる(満腹中枢の刺激)
⑥食品交換表を活用する
⑦外食や間食の工夫をする
まずはできることから1つずつ始めてみましょう。例えば、食事の最初にサラダやキノコ類のスープを完食し、その後に肉や魚、最後にご飯を食べるという順番に変えるだけでも、食物繊維が糖の吸収を遅らせてくれます。また、白米に大麦を混ぜる「麦飯」にする工夫は、手軽に食物繊維を増やせるため非常におすすめです。
なお、詳しくは以下の記事でご紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。
参考記事:糖尿病を改善する食事療法|7つのルールと今日から使えるレシピ集
糖尿病の寛解・改善に向けて食事を続けるコツ
正しい食事のルールを知っていても、「続けること」が最大の難関です。毎日の生活の中で無理なく続けるためには、日常のさまざまな場面に合わせた工夫が必要です。そこでここからは、無理なく継続するための現実的な工夫の仕方についてご紹介します。

外食・コンビニでも血糖値を上げにくい選び方をする
「外食が多いから食事療法は難しい」と感じている方は多いと思います。しかし、少し選び方を変えるだけで、外食でも血糖値への影響を抑えることは十分可能です。
<外食での血糖値を上げにくい選び方>
・定食スタイルを選ぶ(丼物・麺類より主食・主菜・副菜が揃うもの)
・ご飯は少なめにオーダー、または食べ残す
・汁物(味噌汁)は塩分が高いため飲み干さない
・揚げ物より焼き物・煮物・蒸し物を選ぶ
<コンビニでの選び方>
・おにぎりより「サラダチキン+海藻サラダ+ゆで卵」の組み合わせ
・サンドイッチなら野菜多めのものを選ぶ
・飲み物は無糖のお茶・ブラックコーヒー・水にする
完璧を求めすぎると、外食のたびにストレスになります。「8割できていればOK」という気持ちで取り組むことが、長続きの秘訣です。
なお、毎日のランチの選びにお悩みの方、コンビニで何を選んだらいいか迷ってしまうという方は、こちらの記事もぜひ参考にご覧ください。
参考記事:糖尿病のランチは選び方が9割|外食・コンビニで血糖値を上げないメニューとコツ
参考記事:糖尿病の方向けコンビニ食の選び方|セブン・ローソン・ファミマ別おすすめメニュー
家族と同じ食事でも無理なく調整する
自分だけ別のメニューを用意するのは、調理の手間がかかるうえ、精神的にも疎外感を抱きやすくなるため、あまりおすすめできません。なるべく家族と同じおかずを食べつつ、自分に合わせた調整をしていきましょう。
<調整のポイント>
・自分の主食の量だけ少なめにする
・野菜料理を1品追加する(レンジで蒸した野菜でもOK)
・揚げ物は衣を取って食べる
・甘い煮物(かぼちゃ・きんぴらなど)は少量にする
お肉の脂身を少し残したり、味付けが濃いおかずは食べる量を控えめにしたりします。また、自分のご飯の茶碗だけ小さめのものを用意し、盛り付ける量をあらかじめ減らしておく方法も効果的です。
また、鍋料理や具だくさんのみそ汁など、野菜をたくさん摂取できるメニューを定番にすれば、家族全員の健康増進にもつながるでしょう。
食事・体重・血糖値を記録して変化を確認する
食事改善を続けるモチベーションを保つには、「変化を見える化すること」が非常に効果的です。記録することで、どの食事が血糖値に影響しているかを自分で把握でき、改善につなげやすくなります。
<記録しておきたい3つのポイント>
①食事内容(何を食べたかを振り返るため)
②体重(体重の変化を把握するため)
③血糖値(食事との関係を把握するため)
最近は、スマホのカメラで食事を撮影するだけで、AIが自動でカロリー計算や栄養解析を行ってくれる便利なアプリもあります。以下の記事では無料アプリをご紹介していますので、ぜひご覧ください。
参考記事:糖尿病食の献立はこれでOK!朝昼晩の献立例と食事管理を楽に続けるコツ
糖尿病を治す(寛解を目指す)食事についてよくある質問

糖尿病は食事だけで自力で治せますか?
食事療法だけで「完治」することは、現在の医学的見地では難しいと考えられています。しかし、早期の2型糖尿病であれば、食事・運動・体重管理を継続することで「寛解(薬なしで血糖値が正常範囲に保たれる状態)」に至るケースは報告されています。食事療法は「治す魔法」ではありませんが、「寛解に近づく最も基本的な手段」であることは確かです。
とはいえ、決して「自己判断で薬をやめること」はしないでください。食事改善による血糖値の変化は必ず医師と共有し、薬の調整は医師の指示に従いましょう。
糖尿病の原因として遺伝や食事はどれくらい関係しますか?
2型糖尿病の発症には、遺伝的要因と生活習慣(食事・運動・肥満)の両方が関係しています。
遺伝的素因がある人は、そうでない人に比べて2型糖尿病を発症しやすい傾向があります。しかし、遺伝があるからといって必ず発症するわけではなく、生活習慣の改善で発症リスクを下げることができます。
逆に言えば、「遺伝があるから食事を変えても無意味」というわけでは決してありません。食事や運動を見直すことは、遺伝的リスクがある人にとってもない人にとっても、等しく重要です。
糖尿病に一番いい食べ物はありますか?
残念ながら、「これを食べれば糖尿病が改善する」という特効薬のような食品は存在しません。大切なのは、食事全体のバランスと組み合わせです。そのうえで言えば、以下の食材は血糖値の安定に役立つとされています。
<血糖値の安定に役立つとされる食材>
・納豆(大豆食品)
・きのこ類
・玄米・もち麦
・海藻・オクラ(粘り気のあるもの)
以下の記事では、この他にも糖尿病によいとされる食品をランキング形式でご紹介しております。ぜひ参考にご覧ください。
参考記事:糖尿病を食事で改善するには?糖尿病に良い食べ物ランキング10選
糖尿病の朝ごはんは何がいいですか?
朝ごはんは1日の最初の食事であり、朝食後の血糖値が安定すると、その後の血糖コントロールにもよい影響が出ると言われています。
<糖尿病に向いた朝食の例>
・和食スタイル:麦ご飯(少なめ)+納豆+焼き魚+野菜の味噌汁(汁は半分)
・洋食スタイル:全粒粉パン1枚+ゆで卵2個+サラダ(ドレッシングは少量)+無糖コーヒー
<避けたい朝食の例>
・菓子パンだけ
・白米と漬け物だけ(タンパク質と野菜が不足)
・朝食抜き(昼食後の血糖値が急上昇しやすくなる)
忙しい朝でも、タンパク質(卵・納豆・豆腐)と食物繊維(野菜・海藻)を意識するだけで、血糖値の安定につながるでしょう。
なお以下の記事では、朝昼晩におすすめのレシピをご紹介しておりますので、ぜひご活用ください。
参考記事:糖尿病食の献立はこれでOK!朝昼晩の献立例と食事管理を楽に続けるコツ
まとめ
この記事では、「糖尿病を治す食事」というテーマで、寛解を目指すための食事の基本と継続のコツをお伝えしてきました。
食事を変えることは、決して簡単ではありません。でも、毎日の食事の小さな積み重ねが、血糖値を安定させ、合併症を防ぎ、いつか「薬が減った」「数値が改善した」という結果につながっていきます。
完璧を目指す必要はなく、今日より少しだけよい食事を、明日も続けること——それが、寛解への近道となるはず。無理のないペースで、できることから少しずつ生活に取り入れていきませんか?